退出ゲーム 初野晴

数年前にどこかのブログの書評を読んでAmazonの欲しいものリストに入れておいたのだが、そのまま放置してしまった。今回読んで、すぐに買わなかったことを後悔した。面白い。

ハルタとチカ、2人の吹奏楽部員を中心にした、ミステリ要素ありの青春小説。4編収録されている中の、前半2編は学校を舞台にした狭い世界の物語なのだが、後半2編はあらすじからかけ離れた展開力が凄かった。

文章のノリも好み。

 スピードキュービストのハルタ。
 その異名通り、ハルタは学校の頂点に君臨した。キュービストとは六面完成できるひとの正式な総称で、完成まで三十秒を切る強者にはスピードの冠が与えられる。以来、ときどき音楽室から「駄目だ。こんなもんじゃ世界一になれない」と嘆く声、そしてみんなの励ます声がした。ちなみに公式の世界記録は七・〇八秒。そんなの絶対無理だ。みんな頼むから真面目に吹奏楽の練習しようよ。

ミステリとしてはちょっと微妙なところもある。伏線はあるけれど、全般的に知識で伏線を活かしており、そのため”高校1年生”の知識が深すぎるところが、なんだかもにょもにょする。別に金田一少年、工藤新一みたいな”名探偵”が主役なら探偵の知識が豊富なことに違和感がないのだけれども、日常の謎、青春小説からのイメージと、解決がマッチしない。もっとも、それによって後半2編は特に話に厚みが増しているところがあるので、悪いわけではないのだけれども。

-結晶泥棒
文化祭展示のために用意していた硫酸銅の結晶が盗まれる事件。
この話の最初で引きこもっていたハルタの印象と、その後のハルタのイメージがなかなかマッチしなかった、、、

-クロスキューブ
オーボエ奏者勧誘のため、彼女の弟が遺した6面全てが白いキューブを解くことに。
自分にもキューブの解法は察しはついたのだが、そこからさらに一段進めた結末で泣いた。
解決も含めて一番”日常の謎”っぽい作品。

-退出ゲーム
サックス奏者勧誘のため、演劇部と即興劇「退出ゲーム」で対決することに。
「退出ゲーム」そのものが面白い。あるシチュエーションから退出できれば勝利となるのだが、相手による妨害で簡単には退出できなかったり、即興劇ならではの状況追加、設定追加によって立ち位置が一変する作り。唐突に共謀が示されたところはポカーンとしたが、締めは綺麗だった。

-エレファンツ・ブレス
発明部が開発した、思い出と関連した色から思い通りの夢を見る装置。バス・トロンボーンを抱えた購入者から依頼されたのは”エレファンツ・ブレス”という存在しない色だった。
話の流れがすごい。最初の発明品の説明には思わずお金を出したくなったり。
真相からラストの伏線回収の流れには泣いた。最近涙腺が弱い気がする。

“ハルチカ”シリーズとして続編も出ているようなので、早めに手に入れたいところ。

退出ゲーム (角川文庫)
退出ゲーム (角川文庫)

posted with amazlet at 12.06.26
初野 晴
角川書店(角川グループパブリッシング) (2010-07-24)
売り上げランキング: 46962

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です